【第1回】森と暮らす家 ~私たちの選び方~ 薪ストーブと森の住まい(前編)
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2026 / 06 / 18 更新
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世の中には、たくさんの「いい家」があふれています。
高性能な家、おしゃれな家、便利な家。
でも、自分にとって本当に心地よい家って、どんな家でしょうか?
「私たちは、どんな場所で、どんなふうに生きていきたいんだろう?」
そんな問いから始まった、とあるご家族の家づくりがあります。
都会での慌ただしい日々に、どこかしっくりこない思いを抱えながら、
いつかは自然の中で暮らしたい——。
そんな願いを胸に、お子さまの誕生をきっかけに、ご主人の故郷である神石高原へ移住されたIさんご家族。
「自然に負荷をかけない、昔ながらの丁寧な暮らしがしたい」
その想いをかたちにする場所としてたどり着いたのは、
薪ストーブの炎がやさしく揺れ、自然の恵みが日々に溶け込む、
森とともに暮らす住まいでした。
本シリーズでは、【森と暮らす家】~私たちの選び方~ と題して、ご夫婦がどのようにして「自分たちらしい暮らし」を選び、紡ぎ出していったのか。その軌跡をシリーズでお届けします。
第1回:薪ストーブと森の住まい
3月。暦の上では春ですが、朝はまだ霜が降りるような寒さが残る神石高原町。
豊かな山々に囲まれた小高い場所に、Iさんのお住まいは建てられました。

周囲の風景にやさしく溶け込むように佇むその住まいは、静かで穏やかな時間の流れを感じさせてくれます。
記念すべき連載の第1回は、Iさんご家族が叶えた「自然の恵みを五感で楽しむ暮らし」について、お気に入りの空間や薪ストーブのエピソードを交えてお届けします。
光と熱をデザインする。障子と窓辺の特等席

朝、1階の心地よいリビングに降りて、奥様がまず行うのは「障子」を開けること。
「朝、私が一番早く起きて、1階に行くんです。
外が寒いって、最初一人の時はあんまり気付かなくて。
障子を開けたら外に霜が降りてるから『あ、今日寒いんだ』って。
あとで気付くぐらい、暖かく起きられています。」
と笑顔で語ってくれました。
リビングにある大きな窓には、カーテンではなく障子が採用されています。
日中、障子を開けると、たっぷりの陽の光が入ってきて部屋をポカポカと温めてくれます。晴れた日には、掃き出し窓を全開にして外の空気を味わうのも至福の時間。

設計の千葉いわく、この大きな窓から入るお日様の力は、なんと1000Wの電気ストーブ4〜5台分もの暖房効果があるのだとか。
そして夜、障子を閉めることでその温もりを家の中にギュッと閉じ込める、地球にも家計にも優しいパッシブな工夫が活きています。
窓の向きや形をどう活かすかは、設計でできる工夫のひとつです。
→「風の通り道を設計する|窓の数や形・位置に意味があるという話」

↑窓と障子の間はぽかぽかと暖かく、次男くんのお気に入りスポット。
そんな心地よい窓辺は家族が自然と集まる居場所に。
家の中で一番お気に入りの場所はどこですか?
そう問いかけると、「デイベッドのある窓辺です!」と、ご夫婦そろって同じ答えが返ってきました。

「インスタでとあるインフルエンサーの方の暮らしぶりを拝見していて、窓辺の居場所『ヌック』にすごく憧れていたんです。季節の移ろいも感じられますし、子どもと過ごす時間を大切にしたいと思ったときに、自然と集まれる場所があるといいなと思って。最初から、ヌックがほしいです!と伝えていたんです。」と奥様。
※ヌック(Nook)…家の中に設けられた居心地の良い隠れ家のような小スペースのこと

「窓が大きいから、『空が綺麗だね』っていう話を子どもとしたり、望遠鏡にはまっていた時は、月や星を眺めて『外に出てみよう』ってなったり。子供たちも絵本を読んだり、おもちゃを窓枠のところに置いて遊んでいます。大人だけの時は飲み物を片手にくつろいだりして…それぞれ好きな過ごし方をしてますね。ここは一番家族みんなが使ってるような気がします。」
大きめのデイベッドは、この場所に合わせて製作されました。
府中市の家具メーカーわかばかぐにオーダーしたソファ部分は、適度な硬さでゆったりと身を預けることができます。

親子で座って絵本を読んだり、こどもたちが並んで遊んでもゆとりがあります。

家づくりのスタートから思い描いていた「窓辺の居場所」は、家族が自然と集まる、かけがえのない空間になっているようです。
家の中心で炎を眺める、五感で楽しむ薪ストーブ
この住まいのもう一つの主役が、家の中心に据えられた薪ストーブです。
同じ神石高原に暮らすご友人宅で出逢ったのが、長野県在住のチェコ人アーティスト、イエルカ・ワインさんが手がける薪ストーブ。
その佇まいに惹かれ、住まいづくりに取り入れることを決めました。
どっしりとした存在感に加え、高い燃焼効率と、料理も楽しめるオーブン機能を備えています。
やわらかな暖かさと美しさをあわせ持ち、日々の暮らしに静かな豊かさをもたらしてくれる存在です。


↑側面を開けると中はオーブンに。ハンドルも木製で可愛らしい。

火を点けるのは、いつも夕方。
「まだ難しいですね。うまく点く時と、『あれ?また消えたな』って時があります。だいぶコツは掴めてきていますが(笑)」とご主人。

薪ストーブをあえて家の中心に配置したことで、吹き抜けを通じて2階や小屋裏まで、家全体がやわらかな暖かさに包まれます。

↑薪ストーブから上がる暖気が吹抜を通じて家全体に行き渡る。

「ソファに座って、炎をぼーっと眺めているだけで何時間でもいられますね」
「何も考えずにぼーっとする時間がすごく好きなんです。東京にいた頃は、時々海を眺めに行ったりしていたんですけど、今は家でそんな時間が過ごせています。ソファに座って、ただ炎を眺めているだけで暖かいし、すごく心が癒やされます。」
そんなご主人の言葉に、
「(炎を見るために)毎回窓をきれいに掃除しているよね(笑)」と奥様が笑います。

↑ご主人が丁寧にガラス窓を磨き、鮮やかな炎が美しく映し出されます。
「ストーブの前に敷物を敷いて、そこに子どもと寝転んでみたりもしました」と奥様。
暖かな炎を眺める時間は、ご家族にとって大切な休息のひとときになっているようです。
薪を焚いたときにリビングに広がる香ばしい香りは、「キャンプしてるみたい」と子どもたちにも好評。五感を心地よく刺激してくれます。
「去年は引っ越したばかりで薪の調達ができなかったんですが、今年は家の近くの木を切る話があって。その木をもらってきて、薪にできないかと考えています。」
と、次の冬に向けた準備も進めているそうです。


↑(上)薪ストーブの道具たち。(下)手作業が大好きな長男くんは、薪を細かく切る作業をお手伝い。子ども用の薪割りグローブも用意されたのだとか。
東京時代はオール電化で暮らしていたIさんご家族。
便利な生活の中で、どこか違和感を感じることもあったといいます。
「何かあった時に、電気だけだと、使えなくなった時の不安もありました。
今はいざという時、火が使える暮らしはなんだか安心感があります。」と奥様。
「日中は太陽光発電があるので電気を使い、日が落ちて発電が収まる頃に火を点けるんです」と語るご主人。
自然のサイクルと暮らしのリズムを重ねながら、無理のないかたちでエネルギーと向き合う——。
そんな心地よい暮らし方が、この住まいには息づいています。
・つづく・
いかがでしたでしょうか。障子越しの柔らかな光、薪ストーブの炎、そして空間いっぱいに広がる木の香り。Iさん邸には、深呼吸したくなるような「五感で味わう心地よさ」が溢れていました。
こうした自然の恵みは、ご家族の毎日の暮らしに素敵な変化をもたらしているようです。
次回、第2回:薪ストーブと森の住まい(後編:この家ならではの過ごし方)では、この住まいで紡がれるご家族それぞれの暮らしの風景をお届けします。
木の家ならではの、心地よい時間の流れをどうぞお楽しみに!

執筆者 /
テシマ
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