実家を、これからの家に。親と子で暮らすためのリノベーション
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実家をリノベーションする。
最近では、そんな家づくりも珍しくなくなったように感じます。
ただ、実際に考え始めると、間取りや設備の前に、考えておきたいことがいくつも出てきます。
これから誰が暮らすのか。
親と子が一緒に暮らすとして、どこまでを一緒にするのか。
今ある家の何を残して、何を変えるのか。
そして、限られた予算の中で、どこにお金をかけるのか。
今回ご紹介するのは、福山市にある親世代の住まいへ子世帯が移り、一緒に暮らすために行ったリノベーションです。
最初から「こういう家にしましょう」と、すんなり決まったわけではありません。
一度考えた間取りを見直したり、予算に合わせて工事を減らしたり。
減らしてみたけれど、
「やっぱり、これはあった方がいいです」
と戻したものもありました。
工事を始めてから初めて分かったこともあります。
暮らし始めてから、
「ここは、もう少しコアハウスさんの提案を聞いておいてもよかったかもしれない」
と話してくださったこともありました。
振り返ると、この家のリノベーションは、古い家を新しくするというより、
これからの暮らしに合わせて、残すものと変えるものを一つずつ決めていく仕事でした。
完成した住まいだけでなく、その途中で実際にどんなことを考えたのかも含めてご紹介します。
今回のリノベーション

▲before キッチンの暗さと作業動線の改善を希望されました
所在地:福山市
建物:戸建て住宅
家族構成:親世代+子世帯
工事期間:約4か月
工事費:1000万円台後半
工事方法:住みながらの全面リノベーション
完全に分かれた二世帯住宅ではなく、
1階は親世代と家族が一緒に使う場所。
2階は子世帯が中心に使う場所。
という構成にしています。
一緒に暮らす。でも、いつも一緒ではない

▲before 南入りの玄関から家の真ん中に廊下
もともとの家は、玄関から廊下が伸び、その両側に和室やLDKがある、比較的昔ながらの間取りでした。
そこへ子世帯が移ってきます。
ご相談に来て下さった子世帯のご夫妻は、
「二世帯住宅にするかどうか」を
始めから具体的に考えていたわけではありませんでした。
お話を伺っていると、一緒に食事をしたり、話をしたりする時間は大切にしたい。
一方で、それまでそれぞれに営んできた暮らしもあります。
親世代にも子世帯にも、自分たちのペースで過ごせる場所が必要そうでした。
雑談も交えながらお話を伺う中で、そんな距離感を望まれているのかな、と感じました。
そこで、
1階には、親世代の生活空間と家族が集まるLDK、浴室などの水まわり。
2階には、子世帯の寝室や子ども室、セカンドリビング、子世帯用のランドリールーム。
という形にしました。

▲after 家族が集まる団らんの場の1階LDK

▲after 子世帯だけで過ごせる2階セカンドリビング
完全に二つの家へ分けるわけではありません。
2階に上がれば、子世帯だけで過ごすこともできる。
洗濯も2階でできるので、日々の家事を自分たちの生活エリアで済ませやすくなります。
親と子で暮らす家というと、「一緒にするか、分けるか」と考えがちですが、その中間もあります。
一緒に使いたいところは一緒に。
少し距離があった方がいいところは分けておく。
今回のご家族には、そのくらいの距離が合っていました。
これまで暮らしてきた人と、これから暮らしていく人
実家のリノベーションで難しいのは、今ある家だけを見ていても答えが出ないところです。
親世代にとっては、長く暮らしてきた家です。
和室があり、仏壇があり、これまでの暮らしの中で当たり前になっていることがあります。

▲before 庭を望む大きな和室と広縁

▲after 広縁を親世帯の個室に再構成し、和室は6帖に
一方、子世帯にとっては、これから毎日を過ごしていく家になります。
仕事から帰って、食事をして、洗濯をして。
家族で過ごす時間もあれば、自分たちだけで少しゆっくりしたい時間もあります。
打合せをしていても、親と子、どちらかが自分たちの希望を強く主張するご家族ではありませんでした。
むしろ、お互いのことを考えられるからこそ、
「これは今の使い方に近い形で残した方が慣れてるから使いやすいよね」
「これから長く使んだから、思い切って変えたらいいよ」
「せっかくならこの際、便利になるしキレイに変えようか」
「まだ数年前に変えたばかりのトイレを新しくするのはもったいないかな」
と、考えることが増えていきました。
こういうところは実家リノベーションならではだと感じます。
新しい家なら、「これからどう暮らしたいか」を中心に考えられます。
実家の場合は、そこにもう一つ、
「これまで、どう暮らしてきたか」
が加わります。
今までの暮らしを全部消してしまうのではなく、これからの暮らしとどうつなぐか。
今回の計画では、そこを大切にしました。
予算調整では、まず「残せるもの」を考えた
最初に考えた要望や機能性を盛り込んだプランは、ご家族にも気に入っていただけました。
ただ、やりたいことを漏らさず入れていけば、工事費も大きくなります。
そこから予算との調整が始まります。
リノベーションの見積りを下げようとすると、
「何をやめるか」
を考えがちです。
でも今回は、その前に、
「今あるものの中で、まだ使えるものはないか」
を見直しました。

▲工事中 分電盤や以前リフォームされた給湯器は継続使用に
例えば、既存の壁。
新しい暮らしに合わせて、全部壊して新しい間取りにするのではなく、使える壁は位置や形を変えずできるだけ利用しました。
階段や下足入れなど、まだ使えるものはそのまま利用する。
一方で、毎日の使い勝手を考えると変えた方がよい浴室は新しくする。
何でも新しくすれば、見た目はきれいになります。

▲after 既存の下足箱や階段はそのまま利用しました
でも、それだけがリノベーションではありません。
これはまだ使える。
ここは変えた方が暮らしやすくなる。
今ある家を見ながら、その境目を一つずつ決めていきました。
コアハウスのリノベーションについては、森品質リノベーションでも、私たちの考え方をご紹介しています。
一度減らしてみたから、分かったこと
実は、予算調整は、一度では終わりませんでした。
最初のご要望を盛り込んだ内容でお見積りをしてから、ご家族でもう一度話し合われ、少し工事内容を減らすことになりました。
そこで改めて、
「この状態で暮らすと、どうだろう」
と考えてみます。
すると、
「ここはなくても大丈夫そう」
というものもあれば、
「やっぱり、この要素は外せないです」
というものも出てきました。
結果として、1000万円台中盤まで一度小さくした計画に、必要だと考えたものを戻しながら最終的な内容を決めています。
工事費は1000万円台後半となりました。
もちろん、これは今回の建物と工事内容での金額です。
既存住宅は、一軒ずつ状態が違います。
どこまで間取りを変えるのか。
水まわりをどうするのか。
断熱や構造にどこまで手を入れるのか。
それによって金額は変わります。
今回の打合せで印象に残っているのは、
一度減らしてみたからこそ、「これは必要だった」と気づくものもあった
ということです。
予算調整は、単に金額を合わせるための作業ではありませんでした。
そのご家族が、これからの暮らしで何を大切にするのかを整理する時間でもありました。
暮らしてから分かった、「もう少し提案を聞いてもよかったこと」
完成して、しばらく暮らしていただいたあと。
お話をする中で、
「ここは、もう少しコアハウスさんの提案を聞いておいてもよかったかもしれない」
と言われたことがありました。
例えば、スイッチやコンセントの数や位置。
一部の間取りについても、実際に暮らしてみて気づくことがあったそうです。
もちろん、全部に余裕を持たせればよいわけではありません。
予算がある以上、何かを選べば、何かを見送ることもあります。
ただ、この言葉を聞いて改めて感じたのは、
後から変えやすいものと、変えるのが大変なものは分けて考えた方がいい
ということでした。
家具なら、暮らし始めてから変えられます。
一方で、壁の中に入る配線やコンセント、スイッチ。
水まわりの位置や、毎日の家事動線。
こうしたものは、あとから変えようとすると工事が大きくなります。
「いくら下がるか」だけでなく、
「これは、あとから変えられるか」
も、予算を考えるときの判断材料になります。
これは私たちにとっても、完成後に改めて教えていただいたことでした。
住みながら全面リノベーションはできる?
計画を進める中で、
「住みながらリノベーション工事はできますか?」
とご相談がありました。
住みながらリノベーションを進めることは可能です。
ただ、建物の状態や工事範囲によっては難しい場合もありますし、工事範囲が大きい場合、
「仮住まいをしなくていいから楽」とは限りません。
今回の家では、住みながら工事を進める方法を選びました。
まず2階から施工します。
2階がおおむね使えるようになったところで生活用品を移し、その後、1階の本格的な工事へ。
こうして家の中で生活する場所を移しながら、約4か月かけて工事を進めました。
仮住まいを用意しなくてよいので、家賃や引っ越しの負担を抑えられるのはメリットです。
一方で、
職人が日常的に家の中へ入る
工事音が続く
キッチンや浴室が使えない期間がある
工事に合わせて荷物を移動する
生活している側も、職人側も互いに気を遣う
といった負担もあります。
工事が終わったあと、
「仮住まいをした方が、楽だったかもしれないね」
というお話もありました。
実際に住みながら工事をされたから出てきた言葉です。
住みながら全面リノベーションはできます。
ただ、
できるかどうかと、そのご家族にとって一番負担が少ないかどうかは別です。
費用だけではなく、数か月続く工事中の生活まで考えて決める必要があります。
リノベーションは、壊して初めて分かることもある
もう一つ、今回の工事で実際にあったことです。
天井などを解体していくと、それまで外からは分からなかった雨漏りの跡が見つかりました。
それに伴って、構造材にも傷みが出ているところがありました。

▲ベランダからの雨漏りがありました
リノベーションの前には、できる範囲で建物を確認します。
床下を見たり、屋根や外壁を見たり。
ただ、壁や天井の中まで、契約前に全部壊して確認することはできません。
今回は、見つかった部分の補修が必要になり、追加工事も発生しました。
心構えとして大切なのは、
できるだけ事前に調べても、それでも見えないところはある。
そこを最初から知っておくことです。
そして何かが見つかったときに、
「どこまで直すのか」
「その分、ほかの工事をどうするのか」
を改めて整理する。
これも、既存の家を直していく上では必要な判断です。
こうしたこともあるので、リノベーションでは、契約時の工事金額だけで予算をいっぱいにせず、予備費として少し余裕を持たせておくと安心です。
それぞれの居場所がありながら、一つの家で暮らす
そうして完成した家では、1階と2階の役割がはっきりしました。
1階には、家族が集まるLDKがあります。
親世代の日常もここを中心にしながら、子世帯が一緒に食事をしたり、話をしたりする場所でもあります。
2階へ上がると、子世帯の寝室や子ども室、セカンドリビングがあります。
洗濯室も2階にもつくりました。

▲2階のセカンドリビング
一緒に過ごしたいときには1階へ。
少し自分たちだけで過ごしたいときには2階へ。
親と子が一緒に住みながら、それぞれの時間も持てるようになりました。
完成した家を見ると、途中で何度もプランを行き来したことは分かりません。
けれど、この家は最初からこの形だったわけではありません。
残したもの。
変えたもの。
一度減らして、もう一度戻したもの。
その一つずつを考えた結果が、今の住まいです。
全部を新しくした家でも、一番安くすることだけを目指した家でもありません。
今までの暮らしを残しながら、これから必要になるものを足していく。
今回のリノベーションは、そんな家づくりになりました。
実家をどうするか。まずは暮らしから考える
今回は、実家をリノベーションして、親と子で暮らすことを選ばれたご家族のお話でした。
でも、どの実家もリノベーションすればよいわけではありません。
建物の状態によっては、建て替えた方がよい場合もあります。
反対に、まだ十分使える家なら、今あるものを生かした方がよいこともあります。
建て替えについては、「建て替えは、解体から始めない。」でも詳しく書いています。
実家のことを考え始めたとき、
を最初に決めようとすると、なかなか答えが出ないことがあります。
その前に、
これから誰が暮らすのか。
今の家で、残しておきたいものは何か。
これからの暮らしのために、変えたいところはどこか。
そこから考えてみると、選択肢が少しずつ整理されてきます。
実際の建物を見てみると、
「これは使えそうですね」
ということもありますし、
「ここは思っていたより直した方がよさそうですね」
ということもあります。
家族で話してみて、初めて気づくこともあります。
最初から、答えが決まっている必要はありません。
実家のことを、そろそろ考えてみようかなと思われたら
MORI SPACEでは、今のお住まいのこと、ご家族のこと、これからどんなふうに暮らしていきたいのか。
まずは、そのあたりからお話を伺っています。
建物の状態も見ながら、
リノベーションが合っているのか。
建て替えも含めて考えた方がよいのか。
一緒に整理していきます。
まだ方向性が決まっていない段階でも構いません。
実際の木の家を見ながら、これからのことを少しずつ考えていただければと思います。

執筆者 /
千葉大輔 / (有)コアハウス代表・一級建築士
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