建て替えは、解体から始めない。
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2026 / 07 / 28 更新
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建て替えを考え始めると、まず思い浮かぶのは、古い家の解体や、新しい家の間取りかもしれません。
けれど、実際の建て替えは、家を壊すことから始まるわけではありません。
その土地に、希望する家を建てられるか。申請や許可に問題はないか。土地や建物の名義は整理されているか。境界や道路の条件はどうか。今あるインフラを、そのまま使えるか。
先に確かめておくべきことが、いくつもあります。
コアハウスでは、契約後であっても、必要な申請や許可を確認する前の解体は勧めていません。
万が一、申請や土地条件の問題で計画が進められなくなったとき、先に既存の住宅を壊していると、住む場所だけがなくなります。
この記事では、建て替えのメリットとデメリットを並べるのではなく、建て替えで順序を間違えないための考え方をお伝えします。
土地があるから、そのまま建てられるとは限らない
福山市・備後エリアで若い世代からいただく建て替えのご相談では、親御さんや親族が所有する土地・建物を活用するケースが多くあります。
新しく土地を購入しなくてよいことは、大きな利点です。
その分の予算を、住宅の性能や暮らしの質に振り分けることもできます。
一方で、すでにある土地には、分譲地に新築する場合とは異なる確認事項があります。
・市街化調整区域にあたる場合、必要な許可を得られるか
・建築基準法上の道路に接しているか、別途許可が必要か
・土地と建物の名義、相続登記の状況
・隣地や道路との境界が確定しているか
・がけや擁壁など、高低差に関する条例・基準に適合しているか
・上下水道などのインフラを利用できるか
実際のご相談でも、市街化調整区域や接道の条件などにより、複雑な調査や行政との協議が必要になる土地は少なくありません。
こうした条件は、建てられるかどうかだけでなく、費用と期間の両方に関わってきます。
土地を買わずに済むことと、そのまま建てられることは同じではありません。
だからこそ、間取りを考える前に、その土地に何が建てられるのかを調べるところから始めます。
最初のご相談の時点で、図面や登記の書類がすべてそろっている必要はありません。建築予定地の場所が分かれば、どのような調査と資料が必要かを整理できます。
家づくり全体をどこから考えればよいか迷っている方は、
「家づくりは何から始める?」でも、最初の進め方をまとめています。

見えない時間も、建て替えは進んでいる
建て替えは、基礎工事が始まってからは、通常の新築と基本的に同じ流れです。
時間がかかりやすいのは、その前の工程です。
コアハウスの実務では、次のような時間を見込んでいます。
・最初のご相談から予備調査:その土地で建て替えを進められそうかを確認する期間として、2週間〜1か月ほど
・プランの検討:土地条件を踏まえた建築計画をつくる期間として、少なくとも2か月ほど
・計画に基づく法規調査・行政協議:2週間〜1か月ほど。許可や協議が複雑な場合は、数か月を要することもあります
・お見積り:解体やインフラの費用を含め、2か月近くかかる場合があります
これらは一部を並行して進めるため、単純に足し合わせた期間ではありません。
このほか、確認申請や各種の許可に必要な期間が加わります。
名義や境界の整理、測量が必要になることもあります。
そのうえで、解体、仮住まい、引越しの準備が続きます。
ご相談から着工まで、半年以上を見込むことも少なくありません。土地の条件や行政の審査によっては、さらに時間が必要になります。
行政との協議や審査の期間は、外から見ると、何も進んでいないように感じられるかもしれません。
けれど、その時間は、解体したあとに計画が止まらないよう、着工できる条件を確かめている時間です。
建て替え費用は、土地を整え直す費用でもある

建て替えで加わる三つの費用
建て替えの費用は、新しい家の建築費だけではありません。大きく三つに分けて考えます。
一つ目は、今の家をなくすための費用です。
解体、家財の整理、仮住まい、2回の引越し、必要に応じた荷物の保管。
二つ目は、土地を新しい家に合わせて整える費用です。
測量、登記の整理、各種の許可、既存インフラの更新、道路や造成条件への対応。
三つ目は、解体して初めて分かる費用です。
地中埋設物、古い井戸、想定外の基礎や構造物、地中に残された廃材。
建て替えでは、「新しい家を建てる費用」だけでなく、「今の家と土地を、新しい家が建てられる状態へ整える費用」も考える必要があります。
解体費を左右する敷地条件
解体費は、建物の大きさだけで決まるわけではありません。
・道が狭く大型の重機や車両が入れないため、小型重機を使い、作業や搬出の回数が増える
・交通量の多い道路では、警備員が必要になる
・塀、植木、庭石など、建物以外の撤去物が多い
・地中埋設物や古い井戸が見つかる
・新築工事で使うインフラや、境界付近のものを残す必要がある
・アスベストの事前調査と、含有が確認された場合の除去対応
解体工事を、施主様が知り合いの業者へ直接依頼されることもあります。その場合も、解体の前に、どこを壊してどこを残すかを確認させてください。
残しておくべき配管や工作物まで撤去してしまうと、新築側で追加の工事が必要になります。
古い水道管を更新する場合
古い住宅では、口径13mmの給水引込管が使われていることがよくあります。
現在の住宅は、キッチン、洗面、浴室、トイレ、食器洗い乾燥機、外水栓など、水を使う場所が増えています。同時に使ったときの水圧と水量を確保するため、口径20mmへ引き直すことがあります。
引き直しの費用は、道路を掘る距離、舗装の復旧範囲、道路の種類、交通量、道路管理者との調整によって変わります。
水道がすでに引かれていても、新しい住宅の使い方に合わず、更新が必要になる。建て替えでは、そうしたことが起こります。
建て替えは、建物だけを新しくする工事ではありません。敷地やインフラも、次の暮らしに合わせて整えていく工事です。
福山市の建て替え補助制度
福山市には、旧耐震基準の木造住宅を同じ敷地で建て替える場合に使える補助制度があります。「木造住宅耐震化促進補助事業」の、現地建替え工事という区分です。
補助額は、対象経費に応じて上限115万円です。
対象になるかどうかは、複数の条件で決まります。既存住宅が1981年5月31日以前に着工されたものか、構法、耐震診断の結果、敷地が居住誘導区域内にあるか、新しく建てる住宅が省エネ基準に適合するかなどを確認します。
既存住宅がすでに空き家になっている場合は、対象外となることがあります。
注意が必要なのは、契約と着手の順序です。この制度を利用する場合は、交付決定を受けたあとに、現地建替え工事の設計・施工に係る契約を結び、工事に着手する必要があります。
年度ごとの予算枠があり、受付が早い時期に終わる年もあります。
先に契約や解体を進めることで、補助制度を利用できなくなる場合があります。
ここでも、確認が先です。
※2026年7月時点の情報です。2026年度の申請受付は終了していますが、制度に関する相談は随時受け付けられています。最新の要件と受付状況は、福山市建築指導課へご確認ください。
制度を使えるかどうかも含めて、早い段階で整理しておくと、選べる道が狭まりません。まだ方向性が決まっていない段階でも、確認すべきことは一緒に整理できます。
まずは、MORI SPACEで相談してみるところから始めていただけます。
建物を残すかではなく、その家をあと何年使うか
ここまで見てきたのは、建て替えを実現するための、土地や手続きの条件です。
もう一つ考えておきたいのが、その家をこの先何年使うのかということです。それによって、建て替えとリノベーションのどちらを選ぶかも、かける費用の考え方も変わります。
リノベーションを検討できるかどうかは、まず基礎を含む建物の状態を確認します。
基礎や構造、費用まで含めた詳しい判断については、
「リノベーションか、建て替えか?」で整理しています。

ここでお伝えしたいのは、判断を分けるのは建物の状態だけではない、ということです。
コアハウスでは、建物の状態にもよりますが、リノベーションでは30〜50年、建て替えでは70〜100年ほどを、計画上の時間軸として考えます。
ご夫婦の代で使い切るのか。お子さんへ住み継ぐのか。お孫さんの代まで残すのか。将来、手放す可能性があるのか。
建物を残せるかだけでなく、その家をあと何年使いたいのか。それによって、建て替えとリノベーションの判断は変わります。
今ある建物を活かす考え方は、「森品質リノベーション」にまとめています。
実際に既存の住まいを整え直した施工事例は、「祖母と暮らしやすく」でご覧いただけます。
次の家を、同じ理由で早く建て替えないために

冒頭の古家を建て替え、次の暮らしに合わせて整えた住まいです
今の家を建て替える理由は、人によってさまざまです。
暮らし方から始まることがあります。家族構成に間取りが合わなくなった。介護を見据えて、バリアフリーにしたい。
建物の状態から始まることもあります。夏は暑く、冬は寒い。設備が古くなった。耐震性が不安。雨漏りやシロアリ、腐朽がある。
新しく土地を買うより費用を抑えられる、という理由もあります。
大切なのは、これらを古い家の問題として並べて終わらせないことです。
次の家が、同じ理由で早く寿命を迎えないために、何を織り込むか。それが、つくり手の仕事だと考えています。
コアハウスでは、長く使う家の基本として、次のことを設計に織り込んでいます。
・許容応力度計算による耐震等級3
・強い骨格を保ちながら、将来、間取りや設備を変えやすい木造ドミノ住宅
・長く快適に暮らすための温熱・空気環境
・補修や交換を続けやすく、この先も手に入りやすい素材
長く使えるための構造や可変性は、施主様に考えていただく項目ではなく、つくり手側が住まいに織り込むべきものだと考えています。
骨格と間取りを分けて考える設計については、「木造ドミノ住宅とは」で詳しく説明しています。
建て替えがよいのか、今の家を活かす方法があるのか。
土地と建物の状態、そしてその家をこの先どれくらい使うのか。それらを一緒に整理するところから始めます。
コアハウスでは、まずMORI SPACEで、建て替えを考え始めた背景や、これからの暮らしについてお伺いします。
まだ判断が固まっていなくても問題ありません。確認すべきことを整理し、建て替えとリノベーション、それぞれのメリットとデメリットを分かりやすくお伝えします。
必要に応じて現地も確認し、判断に必要な情報を一つずつそろえていきます。
建て替えを決断するには、勇気が要ると思います。
だからこそ、必要な情報をそろえ、どちらがご家族に合うのかを一緒に考えることも、地域の工務店の大切な役割です。
結果として、建て替えを選ばないという結論になっても構いません。
ご家族が納得できる判断の一助になれればと思います。

執筆者 /
千葉大輔 / (有)コアハウス代表・一級建築士
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